こたろと恭介は、無言でくみとボロの所まで近づいて来た。
3人の男がくみを取り囲む形となった。
3人はくみの言葉を待った。
「テス、テス」くみはおもむろに高音域で発声した。
「なんですのん、それ?」前屈みになったボロが堪りかねてくみに突っ込んだ。
「いいシーンなので、声の調子を・・・」くみはきわめて素で言ったが、こたろも恭介も表情をひとつも変えなかった。
くみはアドリブが、スベッたことを知った。
が、遅かった。
「3人のわたしへの気持ちを有難く思います」
くみはそれぞれに向かって言った。3人の男は微動だにしない。
「3人からのわたしへの愛の答えを出すために、今日ここに来てもらいました。
正直言って3人が揃うまでまだ決めかねていました。
でも、今、ひとつだけはっきりしたことが・・・」
3人の男はなおも無言でくみを凝視している。
「わたしはやっぱり・・・好きになる人は、ほんとうの人間の男の人が・・・」
ボロが思わず顔を上げた。
くみは、ボロの顔をまっすぐに見詰めた。
くみの頬からは涙が伝わっている。
「ボロちゃん、ごめんね。ずっと優しくしてくれたのに・・・」
ボロは信じられないという表情でくみを見続けた。
「く、くみさん、そんな、わて・・・」
ボロは声にならない嗚咽交じりでそう言った。