新作映画になかなか興味を引かない時、過去に見た印象的でもう一度観たいという作品を選び観る。
今回は2010年に公開された、湊かなえ原作で松たか子主演による「告白」をAmazonプライムで再視聴した。
この原作は同名小説「告白」というタイトルで、ミステリー界では「嫌ミス」(嫌な後味が残るミステリー)の女王と呼ばれるようになった湊かなえのデビュー作。この本は300万部売れた。
この作品で監督を務めた中島哲也は、観る者に強烈な印象を残す作品作りで有名だけど、この「告発」という映画も例外に漏れていない。
冒頭30分で一気に引き込まれる。
何気ない中学校のホームルームの中で、教師の松たか子が淡々と生徒たちに話すシーンからはじまる。生徒たちは各々勝手に喋り教室はかなり乱雑だ。中には教室を抜け出し、サボりに行く生徒もいる。
そんな喧騒な教室で、松たか子のモノローグ的な話しから始まる。
話しは自分はこの学校を近々ある理由で辞める、ということを淡々と語り始める。教師を辞めると聞いてもなんら驚かず、喜んでいる生徒などもいる。
全然教室は静まり返らない。
「学校を辞める理由は自分の娘が亡くなったためです」
と顔色変えずに淡々と語り出す松たか子。
さらに、衝撃的な内容はヒートアップしていく。
「プールの中で死んでいましたので、警察には事故扱いされました」
「でも娘は事故で亡くなったのではなく、殺されたのです」
「この教室の中にいる生徒によってです」
と、ショッキングな内容は続く。
無表情で朗読するかのように冷静に語る松たか子の演技が秀逸だ。
この辺りから教室の生徒たちは静まりかえる。
「私は未婚の母です。父親は教師の〇〇です。でもその父親はエイズに感染していることが分かり、私たちは結婚することを話し合いで止めました。娘の将来を考えた結果で、私も同意しました」
「犯人を仮にAとBと呼びましょう」
と言い、松たか子は自分が調べた娘の死因を時系列的に冷静に解説していく。
「でも私はこの事を公表しません。理由はあなた達は未成年であり少年法で守られているからです。分かったとしても鑑別所かなんかで、作文でも書かされて終わります。罪にはなりません」
「人の命、というものは大切です。教師というものはその「命」というものを生徒のあなた方に教えるのも義務です」
「お昼の時に二人が飲んだ牛乳パックに、エイズ患者の〇〇先生の血液を混入しました。おそらく5年後くらいで、二人は発症するでしょう。その時にはじめて「命」の尊さを知ると思います」
教室の生徒はパニック状態となる。。。
松たか子が演じる主人公の冷徹な演技が光り、観る者を最後まで引き込む力強い作品です。
物語の展開は予想を裏切る連続で、緊張感が途切れることなく続きます。
復讐劇としても一級品であり、観終わった後も深く考えさせられる映画です。