昨夜は忙しかった。
阪神タイガースの延長戦、オリンピックの柔道と女子バレーを同一時間帯で見なければいけなかったからです。
ひときわ柔道女子52キロ級連覇を狙う阿部詩選手の2回戦が凄衝撃的だった。
結果的には一瞬の劇的な一本技で阿部詩選手は敗れた。
試合も劇的だったけど、その試合直後の阿部詩選手の号泣に観客もTV画面を観ている全ての人が釘付けになり感動を味わったのではなかろうか。
オリンピックの場で、あれほど号泣した選手をこれまで見た事がない。号泣を越して悲鳴にも近かった。
おそらくそこに彼女がこの大会に全身全霊を掛けて、いかに努力してきたのかが十分に窺い知れる。見る者はそこに感動を与えられたのだ。勝ち負けではない。
それが伝わったのか会場から大きな「ウタコール」が巻き起こった。
そしてもう一つ感動的だったのが、対戦相手の世界ランク1位のケルディヨロワ選手だ。
一本勝ちが決まった時、ガッツポーズとか拳を突き上げるとか笑みを見せることもなく、直後は表情を崩すことなく、畳み脇を見て一度頷いただけだった。とても冷静に。
歓喜に喜ぶコーチ陣とは対照的に、阿部選手と握手を交わすと、一礼した後に静かに畳を下りた。その姿は神々しい程だった。
二人ともこの舞台を目標に極限のトレーニングを積んできたのは、両者の在りようで安易に想像出来る。
最後の勝敗を決めたのはやはり二人の「精神状態」だったと思う。破れその場で号泣した阿部詩選手の心境も分る。でも同等に喜びを感じ取った対戦相手のケルディヨロワ選手の高揚も内心爆発的だったのではないだろうか。
でも、それをケルディヨロワ選手は神聖なる戦いの場では、相手に礼節を重んじるばかりに封印した。その精神力の僅かな差が、勝敗を分けたような気がする。年の差にして2歳だけど、精神の僅かな在りようが最後の最後に勝ち負けを分けたのだと思う。意志の強さだ。
阿部詩選手もまだまだ強くなれる。
記憶に残る試合だったと思う。
勝つことだけが素晴らしいんじゃない。
勝てるかどうか分からないことに、果敢に挑戦しやり抜く姿が素晴らしいんだ。