くみはついに人生最大の岐路に立たされていた。
恭介とこたろには、あれ以来数回ずつ会っている。
二人とも以前からは考えられないほど真摯にくみを求めて来た。
まあ愛の手管には長けていた二人なので、くみも慎重に間合いをとっている。
しかし会えば会うほど二人はくみに愛を語りかけてきた。
結婚詐欺というアクシデントにさえ合わなければ、すでにどちらかの胸の中に入っていてもおかしくないだろう。
そしてついに先週二人から結婚を申し込まれたのだ。
どちらにも即答は出来なかった。
結婚は女にとっては最大の大仕事。
今のくみには考えることがあまりにも多すぎる。
ボロに肩を抱かれてTVを見るのも今やくみにとっては当たり前のこととなっている。
男性型ロボットと一生暮らす女性は増えつづけている。
いつ裏切るか判らない生身の男と結婚するよりは、ずっと安定を得られるというのが最大の理由だ。
その反面人間の男と結婚するというのが一種ステータスになっている部分もある。
「本当の愛を手に入れた女」というところだろうか。
そういうすべての断片が頭をよぎる。
くみは最終的な決断が出来ないでいた。
くみが生身の男を選べば、ボロは返品処理することになる。
そうなれば一生をプログラミングされたロボットは廃棄処分となるのだ。
くみはすでにボロにも十分情が移っていた。
くみは立ち上がり窓辺に行って、カーテンを開け夜空を見上げた。
「どうしたんでっか?」
ボロは驚いたようにくみを見上げている。
そしてくみはドラマの中の松たか子にでもなったように、完全に陶酔した台詞でいった。
「明日、決着をつけます」