流行りのカフェは遅い時間にも関わらず、恋人風のカップルで賑わっている。
くみがいつも独りで酔った帰りに横目で見過ごしていた風景だった。
「あんたらなによ?」といつもは思っていた風景だが、今日は違う。
その中に自分がいる。悪い気分ではなかった。
「元気だった?」
恭介はセブンスターに火をつけながらくみに聞いた。
最後に会った時も彼の煙草はセブンスターだったわ。
とくみは無意識に思いを巡らせていた。
「どうしたの?」
黒目がちな恭介が真っ直ぐにくみに聞いた。
我に返ったくみは、
「ううん、なんでもない」
と彼の質問に関係ない返答をした。
ちぐはぐな会話に少し間があいて、その後顔を見合わせてお互い笑った。
親しい人同士が見せ合う笑い方だった。
くみは時を隔てていたものが、その笑いで急に過去の距離に戻ったような気がした。
「突然こんなこと言うの変やけどサァ・・・」
恭介は煙草に目を落として唐突に切り出した。
くみは彼の昔と変わらぬ喋り方を懐かしく思った。
「なによォ?」
とくみはいつもイザという時のために練習しているドラマ風を装った。
ストローを身体をくねらせながら飲む仕草も付け加えながら。
「オレ、しょうもない女と関係し過ぎたわ。オレ、やっぱくみちゃんでないとアカンわッ」
突然の告白を受けたくみは中腰になって思わず口の中のジュースを正面の恭介に絵に描いたようにぶちまけてしまった。
ずぶ濡れになりながらも恭介の黒目がちな瞳はくみを見据えていた。